「暖まった?」
「うん……」

熱いお茶で喉を暖めると、じんわりと優しさが染み渡る。
ほっと安心したような顔をする鳳綺を、向かいの席に座った雄飛が眺めながら気遣いの声を出した。

一時期元気になったかと思ったが、やはり寂しそうな目ばかりしている鳳綺を気にして、
友人である雄飛はいつもと同じように馴染みの店に連れてきた。
何も言わず鳳綺の言葉を待っている雄飛の姿勢は、少なからず鳳綺に安らぎを与えていた。

「これ、私からの奢りね」
「ありがとう……」

店の女将も常連の鳳綺達が心配なのか席にまでやって来て、
茶のお代わりと軽い食事を運んできてくれた。
皆の優しさに、鳳綺は感謝の気持ちでいっぱいだった。

「好きなら好きって言ったら?何回か此処に来た事ある人でしょ?」

女将が沈黙を破る。

「でも……その人、仙だから。
私みたいな普通の人間からはそんな事恐れ多いし、私なんか相手にしてくれないよ……」
「でもずっと鳳綺に会いに来てたんだろ?」
「それは……単なる気まぐれみたいなもの、だと思う」

言ってて泣きそうになってしまう程、崩れやすい関係だと鳳綺は思った。
自嘲のような笑みが漏れるのを見て、女将の口調が急に強くなる。

「いいかい鳳綺。体が仙だろうが何だろうが、心は人間なんだよ?
自分の想いを告げるぐらいさせてやるんだよ。鳳綺、逃げちゃだめだよ?」
「…………」
「自分の気持ちから逃げて、なかった事にして、今はいいかもしれないよ?
でも諦めきれなかったらどうするんだい。今の関係をずるずる続けたって、仙は永遠の命だよ。
相手ばかりずっと変わらないでいて、自分はただ老いていくばかり。それは、今よりもっと辛い」

鳳綺の肩がぴくりと動いた。

「私だったらどんとぶつかって砕けてもいいさ。
相手に私の存在を刻んで残せるならね。仙にだって傷ぐらい付けられる」

女将は男顔負けの勢いで、それこそ尚隆のように大きく笑う。
雄飛はと言うとその豪快な笑いに狼狽えていた。

「お、女将さん……」

雄飛は溜息をついたかと思うと鳳綺に優しく笑いかけた。
気休めにしかならないとはわかっていたが、それでも言わずにはいられなかった。

鳳綺……俺はいつも傍にいる。駄目だったらいくらでも慰めてやるから」

二人の言葉が温かくて、頷きながら鳳綺は茶の湯気を眺める。

このままではいけないとは思っている、だけどどうする事もできなかった。
確かに仙でも心は人間と同じなのだろう、いや、そうであって欲しい。

(尚隆の中に……私は残してもらえるのかな?)

「うん、ありがとう……私、やってみる」

このまま行っても、いつか尚隆は鳳綺を置いていってしまう、忘れてしまう。

(なら……私の気持ちくらいは告げてもいいのかな?)


女将に礼を言い、一足先に鳳綺が店を出る。
雄飛もそれに続こうとしたが、女将が鳳綺には聞こえない声で引き留める。

「あんたも難儀だね。いつまでも優男を演じてたら一生鳳綺はあんたの気持ちに気付かないよ」
「……俺は、いいんです」

囁かれた言葉に雄飛は苦笑して店を後にした。







10章








その日は慌ただしい朝になった。

大学に春官の一人が来賓する日だからだ。
春官といえば、雲の上いる滅多に会えない高位の仙だ。
そんな人と同じ空間で、役に立つ話が聞ける絶好の機会なので大学中が浮き足立っている。
気に入られれば官に推薦されるかも、という淡い期待の雰囲気も流れているのだろう。

一同が叩頭する中、孫巍(そんぎ)という名の春官が講堂に入室してきた。
孫巍は髪に軽く白髪が交じった、穏やかそうな老人という表現が似合う男だった。

孫巍はこの国の事、人道、求められる官の能力等を説いた。
やはり現役の国官の言葉には重みがあると、鳳綺もこの時だけは他の事を考えずに話に専念した。

最後に孫巍は、今までの官とは違い質疑応答の時間を設けた。
他の仲間達は我先にと様々な質問をぶつけた。

鳳綺も官吏について聞きたい事は山ほどあったが、
それ以外の一つの疑問が頭から放れず、ついに口を開いた。

「……孫巍様、不躾な質問をしてもよろしいでしょうか?」
「申してみなさい」

彼は大らかな態度で次の言葉を待った
長い逡巡の後、場違いだとは思いつつも顔を上げた。

「……孫巍様は、『尚隆』という名前の仙をご存知でしょうか?」

孫巍が目を見開いて驚いた様子を見せるので、鳳綺は戸惑いながら言葉を待った。

「……その御方は仙ではあらせられない。
その御名を口にするにはあまりにも尊い方。注意なされよ」
「は、はい……申し訳ありませんでした……」

頭を下げながら鳳綺は、彼の言葉を何度も何度も反芻していた。

(仙ではない……?)

彼の口ぶりからすると、尚隆は春官よりも身分が高いという事を意味しているのだと思う。
ただの人間ではない事は明らかだけど、仙ではないとは一体どういう事なのだろう。

あと残るのは神籍か妖か麒麟だが、延台輔は金の鬣と聞いた。
妖とも考えられない。

あとは、何が残っているというのだろう。

(なら……あとは、神籍?)

どくん、と心臓が音を立てた。
それが痛いくらいに恐怖を駆り立てて、全身の血が冷えていくよう。

(まさか……)

尚隆は風漢というもう一つの名前があった、何故偽名を使う必要があったのだろうか。
そして、「俺も胎果だからな」と尚隆は言っていた。

今の延王は、胎果だと聞いた。


――「お待ち下さい!しゅ……!」――


密輸商に乗り込んだ時、衛士達は膝を付いてそう言いかけていた。
その続きは、まさか。

(……主上……?)

「…………っ!」

胸元をぎゅっと掴んだ拳が勝手に震えている。
鳳綺の銀色の双眸に涙が滲む。

(そんな……!尚隆が、延王だという事……?)

頭が真っ暗になって、鳳綺を取り巻く世界が凄まじい早さで変わっていく。
行きついてしまった答えを認めたくなくて、心が必死に拒絶する。

ただの思い違いだという可能性だってある。
延王があんなにも平然と市井にいる訳がない。

でも、そうであったなら、尚隆は何者なのか。

(違う!尚隆が王なわけない……っ!
ただ神籍か妖で、ただすう虞を持っていて、ただ胎果なだけで……っ!)

ポタポタと溢れる涙が手に落ちていく。
それは心のどこかで既に結論が出ている証なのか、逃げたいだけなのか、鳳綺にもわからなかった。

(そうだ、六太!六太なら何か知ってるかも……!)

六太に救いを見出そうとして、はっと気が付いてしまう。

どうして彼は、いつもかぶり物をしていたのだろうか。
外でも中でもいつだって彼は外そうとはしなかった。
鳳綺は、彼の髪色を知らない。

延台輔、つまり雁の麒麟、風の噂で幼い姿をしていると聞いた事がある。
それは、つまり。

(そんな……六太も……っ)

最後の希望として思い浮かべた知人すらも、鳳綺を追い詰める事にしかならなかった。


あれからどうやって部屋に戻ってきたのか覚えていない。
頬を流れ続ける涙の感覚と鳴りやまない鼓動の音だけが鳳綺の感じられる全てだった。

「どうして……っ!」

(仙なんかじゃない、彼は神籍……っ!)

王なら話は別だ、そもそも世界が違うのだから。
尚隆は、この想いすら抱いてはいけない相手だった。
気持ちが通じるとか通じないとか、そもそもそんな話ではなかった。

いくら考えても他の答えが浮かばなかった。
そして六太も、そういう事なのだろう。

「、ぅ……っ!」

鳳綺の中で何かが、音を立てて壊れていく。
声にならない叫びが無音の部屋を震わせる。

どうか、尚隆が延王でありませんようにと、そればかりを願っていた。











あの後からは、何だかよくわからないうちに日々が過ぎた。
半ば放心状態の鳳綺に雄飛は今まで以上に心配してくれたが、何も答える気にならなかった。
答えようと思っても何と言っていいのかもわからない。

そして、休日を迎えた。
できれば会いたくないと思った。
だけど習慣化していたそれをやめる事はできず、鳳綺は躊躇いながらも恐る恐る厩を覗いた。

どうしてだろう、今日はいるような気がした。

「尚隆……」

いつもと変わらない様子で尚隆は遠くを眺めていた。
風に軽くなびく髪も横顔も今は違って見えてしまう。
滲みそうになった涙をぐっとこらえ、忘れかけた笑顔を何とか取り戻すと尚隆に駆け寄った。

「尚隆、今度は早く来たね」
「まあな。やっと一息ついたんでな」

ふふ、と柔らかく笑みを浮かべるが頬が引きつりそうになった。

「じゃあ行こっか」
「……ああ」

すぐ目を反らした事に気づかれたかもしれない。
だけど尚隆が何も言わず手綱を持つので、
内心で安堵しながら鳳綺琉綏に乗ろうとすると、ふいにその手を止められた。

鳳綺、今日はたまに乗れ」
「え……?どうして?」
「近いからな、別々で行く必要もない」
「……そうなんだ」

断る台詞が思い付かなかったので素直に跨り、尚隆がその後ろに乗る。

背後から聞こえる衣擦れの音に敏感に反応してしまう自分が恥ずかしい。
飛び立つ動作に衝撃はないのに、気が付いたら尚隆の厚い胸に軽く触れるくらいまで接近していた。

(このまま時が止まればいいのに……)

相手の身分など忘れて、ただ尚隆に包まれていたい。
鳳綺を惑わせるのは、尚隆の微かな甘い香り。
傍にいるだけで感じる幸せと悲しみが絡み合って、鳳綺の心を掻き乱す。

いつもは飛んでいる間も他愛もない会話をするのに、二人の間には静寂が流れている。
鳳綺だけでなく、今日は尚隆もずっと静かだった。

「…………」
「…………」

これで終わりにしなければと、何度も自分に言い聞かせた。
だけどその決意を引き止めようとする自分も確かに存在していて。
葛藤ばかりを繰り返す気持ちに耐え切れなくて、ここから今すぐ逃げ出したくなる。
だけどそうする訳にはいかないと、鳳綺は『たま』に騎乗しながら必死で前を向いた。


たまは関弓の外側の城壁を抜けた所で、そのまま速度を緩めて人気のない場所に降り立った。
近いとは聞いていたが、まさかここが目的地なのだろうか。

「え、どうしたの?何処へ行くの?」

背後を振り返ろうとして、ふと鳳綺が視線を外にやると一人の少年が立っていた。

「……六太?」

六太は何も言わず苦笑しながら傍に来た。
え、どういう事、と鳳綺が六太と尚隆の顔を交互に見比べていると、
尚隆は一息おいてから真剣な顔で静かに告げた。

「……鳳綺、話がある」
「…………」

一体何の話なのだろう、そう疑問に思いながらも鳳綺は心のどこかで悟っていた。
わざわざ六太がこの場所に待っていて、人気がなくて、二人が鳳綺に話さなければならない事なんて。

(ああ、やっぱり、当たっていたんだ)

鳳綺の願望は、本当にただの願望でしかなかった。

「……その前に私からも話しがあるの。いい?」
「……ああ」

鳳綺はたまを降り、瞼を震わせながら尚隆を見上げる。
彼を見つめるだけで胸が躍り、そして苦しくなる。

(なんて、深い色……)

吸い込まれそうな漆黒の瞳を見つめ、鳳綺は諦めたように薄く笑う。

「尚隆が……延王、なんだよね…?六太が……延台輔」

先を越されたとでも言わんばかりに、六太が驚いたように目を見開いた。
だが尚隆は無表情のまま、何の反応も起こしていない。

「……そうだ」

鳳綺は俯いて目を閉じる。
無意識にうっすら微笑んでいた。

「騙すつもりはなかった」
「……わかっています」

静かに答えると、鳳綺は膝を折り頭を地に付ける。

「主上……今までの非礼、謹んでお詫び申し上げ―――」
「やめろ。お前にそのような事をしてもらう気はない!」

鳳綺の腕を強く掴み強引に上体を起こさせる。

「ですが主上……!」
「俺はお前の前ではただの『尚隆』だ」

怒っているような、悲しんでいるような目が鳳綺を射抜く。
尚隆の言いたい事はわかる、だけどそれでも相手は王と麒麟なのだ。
この国で誰よりも尊ばなければならない人だ。
もっと言えば、『人』ですらない。

鳳綺の銀色の瞳が揺れていると、尚隆はさらに言葉を続ける。

「確かに俺はこの国の王だ。だが一人の人間として……お前に、俺の妻になってほしい」
「……っ、……え……?」

息が止まるかと思った。
何を言われたのかすぐには理解できなくて、言葉の意味を噛みしめて鳳綺の唇がわなわなと震えていく。

「それは、……本気で、言っているんですか……っ?」
「こんな事、冗談では言わんぞ」
「そんな……っ!」

ずっと一緒にいられたらと淡い夢を抱いていた。
ただそれだけで、夫婦になりたいと考えるほどの余裕もなかったのに。
彼が口にしたのは色々なものを飛び越えていた。

予期しなかった言葉、でも女として生まれたら誰もが夢見る一言。

尚隆が王だと知る前だったなら、どれだけ喜んだ事だろう。
きっと恥ずかしがりながらも、少しずつ関係を深めたいと手を取っただろう。

でも、もうできない。

鳳綺の見開かれた瞳からついに涙が溢れる。
涙と一緒に出てしまいそうな想いを、目を閉じてぐっと抑え込む。

(私も、ずっと尚隆を……!)

「…………駄目です。主上の妻には、なれません……」
「!鳳綺……!」

叫んだのは六太の方だった。

「申し訳ありません主上、台輔……」

言えない想いがぽろぽろと涙に代わり、苦しい嗚咽が漏れる。
掴まれた手首の痛みは弱らないまま、痺れて感覚がなくなっていく。

駄目なんだ。
鳳綺だって尚隆と一緒になりたい。
だけど尚隆の妻、それはすなわち雁国王后を意味してしまう。
好きだからといって簡単に収まっていい場所ではない。

そもそも、ただの人間である鳳綺では神籍である尚隆と添い遂げる事なんてできない。
鳳綺だけが先に老いて死んでいくなんて、それも耐えられない。
仙籍を得ればいいのかもしれないが、もしそれを与えられたとしても鳳綺は喜べない。
ただ与えられた仙に何の意味があるというのか。
責任を背負う覚悟なんて、今の鳳綺にはない。

恋い焦がれた場所は、鳳綺には重すぎた。

鳳綺!何で駄目なんだよ……!尚隆も俺も鳳綺が必要なんだよ!」
「ごめんなさい……台輔」

詰め寄る六太に首を振る鳳綺
そのやり取りを静かに聞いていた尚隆は長い沈黙の後、目を伏せたまま立ち上がった。

「……すまなかったな、鳳綺
こうなってしまったからには、もう会う事もないだろう」
「……っ」
「尚隆!いいのかよこのままで!」
「強要させる事でもないだろう……行くぞ」

六太はまだ何か言いたげだったが、俯いて自分の金の鬣を掴み見つめた。

鳳綺……ごめんな」

顔を上げた鳳綺の目の前で、尚隆の後ろ姿が遠ざかっていく。

(もう、会えないなんて……っ)

幼い頃から何度も、夢の中で手を伸ばしたけど彼の影には届かなかった。
今度も届かないまま、また彼は行ってしまうのか。
また、置いていかれてしまう。

一瞬頭によぎったのは優しい尚隆の顔。
いつもそんな顔で頭を撫でてくれた。

意地悪なのに、柔らかい笑み。
あの漆黒の眼差しがもう見られないなんて。
二度と笑いかけてもらえなくなる、二度と会えなくなる。

尚隆が、いなくなる。

(……そんなの、嫌だ!……失いたく、ない……!)

「―――尚隆!待って……っ!!」

気がついたら尚隆に駆け寄っていた。

「行かないでっ……!お願い!」

その言葉を聞くと尚隆が弾かれたように振り返る。

「貴方の奥さんになれない!結婚できない!でも……ずっと傍にいて欲しいの!
今までみたいにっ……お願い!!っ…行かな……で……!!」
「わかった……わかったから、もう泣くな」

両手を鳳綺の頬に添え、未だ零れ続ける涙を親指で拾う。
縋るように袖を握りしめてくる白銀の瞳が尚隆を捉えて放さない。

「泣くな」
「しょうりゅ……っ――!」

尚隆はなだめるように鳳綺の唇を塞いだ。

「…っ……!」

もう一度鳳綺は零れるほど銀光を開かせた。
前とは違う、舌が絡め取られるような口付け。

戸惑いながらも鳳綺は柔らかく熱を持つ尚隆の舌を受け入れた。
尚隆はそれを理解したのか更に唇を深く重ねる。
別の生き物のように動き回る舌の息苦しさと、体中を巡る熱に一瞬意識が遠のく。

それなのに、涙さえ塞き止められる程、優しい唇。

やっと唇が解放されると、鳳綺は新鮮な空気を荒く吸い込みながら尚隆を見上げた。

「……また会おう」

息がかかる距離で尚隆が告げ、体を離した。
そして目のやり場に困っていた六太を連れ、たまに騎乗して飛び立って行く。

残された鳳綺は呆然としたまま、その場に崩れ落ちた。











ひっそりと闇が広がる関弓の表通り。
女将が食庁の片付けをしていると、入り口の扉が開く音がした。

「ごめんなさい。今日はもう終わりで……鳳綺!?」

そこに立っていたのは鳳綺だった。
薄笑いを浮かべながら涙を流し続け、泣き腫らした白銀の瞳は遠くを眺めていた。
とにかく入りな、そう促して女将は鳳綺を座らせた。

「はい、温かいお茶」
「……ありがとう……」

熱い液体を必死に喉に流し込もうとする姿を見つめながら、女将は前の椅子に腰掛けた。

「……駄目だったのかい?」

鳳綺はゆっくり首を振る。

「ううん。違うの……妻に、なってくれないかって」
「じゃあ何で泣いてたんだい。よかったじゃないか」
「……断ったの」
「どうして!鳳綺も好きなんだろう?」

鳳綺は諦めたような笑みを浮かべたまま。

「でも……駄目なの。身分が違い過ぎるから……私では妻に相応しくない」

枯れない涙がまた現れて頬を流れていく。
もう鳳綺自身、泣きながら笑っている状態だった。

鳳綺……」

自分ではもう口を出せない事柄なのだと女将は思った。
鳳綺とその男は、他人には想像できない関係にあるのだろうと。

「……それで、諦められるのかい?」
「……今までみたいに会ってはくれるって……」
「え?いいのかいそれで……?」

それは彼女には辛いだけではないだろうか。
相手の男の事情はわからないが、本気であるなら彼も苦しいだろう。

「……わからない」

女将は溜息をついた。

「……そうかい……お茶入れ直してあげるね」
「うん……ありがとう」

女将は席を立ち奥に消えていった。

それが救われる選択だったらいいのだけれど、女将は誰もいない空間に呟いた。











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オリキャラ登場、勝手に春官さん作って暴走しました。

無駄に長くなってすみません。