「ごめ~んフェリア!先に帰っててくれる?この店いいものばっかりあるんだも~ん!」


「ごめん兄さん。僕もうちょっと調べ物があるから先帰っていいよ?」


今心臓が飛び出しそうなのは、絶対この2人のせいだ。






friends2






図書館から宿までの帰路。

今日はアルとウィンリィが他用でいない。
だから今、私はエドと2人で並んで歩いている。


「…………」
「…………」

久しぶりにエドが隣にいる、それはとても嬉しいんだけど会話が続かない。
私だけが思ってるかもしれないけど、この気まずい雰囲気から早く逃げたい。
宿が近づいてきて欲しかった。

でも普通に接しないといけないからこうして苦労して会話の材料を探してる。
幼なじみとしての振るまいを必死に思い出して話しかけた。

「……何かわかった?」

当たり障りのない事を聞いてみる。

「いや……人体錬成については何もだな」
「そう……」


やっぱりエドは私といると窮屈なのかもしれない。
だって、ウィンリィといる時はこんなに大人しくない。


話が弾まない。


フェリアは俯いた。

話したい事がいっぱいあったのに、いざこういう機会になると頭が真っ白になって何も言えない。
それどころか、『2人で歩いてるんだ』と考えるだけで何か全部がどうでもよくなった。

チラリと盗み見ると、やっぱりエドは綺麗な顔をしていた。
夕日で金髪が淡く光ってるし、顔にかかる影が一層私の胸を躍らせた。

こういう真面目なエドも好きだけど、子供みたいなエドももっと好きなんだよ……?


「お前、大丈夫か?」
「え?!……な、何で?」
「いや、最近元気がないから……ってウィンリィが心配してた」

そう……ウィンリィがね。
エドじゃないんだ。

「ちょっと疲れが出たかもしんない」
「図書館にも来なくなったし」
「その……宿の方が勉強がはかどるから」
「そうか……無理すんなよ?」
「うん、ありがと……」


私って嫌な人間だ。

ウィンリィの名前が出るたびに反応してる。
それがエドの口から出たなら尚更。

私の心が警告してるから。


図書館だってあんまり行かなくなった。
錬金術の勉強もしなきゃいけないけど、エドがいると気後れする。

だって……エドは錬金術に関しては天才だもん。
私のどうしようもない錬成レベルをエドに知られたくない。

そんなわがままで、私は宿で借り貯めした本を読んでいる。






「お!フェリアちゃんじゃないか!」
「え?」

顔を上げると、この街で親しくなった男の人だった。
長身で優しくて、顔も悪くない。

「今日はどうしたんですか?」
「ちょっと仕事でね~もう毎日ヘトヘトだよ」
「大変そうですもんね、いつも」
「でもフェリアちゃんに会えたから元気になったよ!」
「もう~何言ってるんですかぁ」

さっきの精神的疲れからか会話が楽しくて仕方がない。
この人とはこんなに笑ってられるのに。

フェリアは第三者から見ればとても嬉しそうだった。
笑顔と共に黒髪が揺れては流れている。


エドはフェリアとこの微妙になれなれしい男を横目で見ていた。


「じゃあまたウチにも来てよねフェリアちゃん!」
「はい、ありがとうございます」

男は爽やかに去っていった。

「……誰?」
「近くの工具店の人。ウィンリィがよく行くから親しくなったの」
「ふ~ん……」

心なしかエドの機嫌が悪くなった気がした。

バカな私。
自分でウィンリィの名前なんか出すから墓穴を掘るのよ……


「で、でもやっぱりああいう人だよね~」
「何が?」
「……彼氏……にするなら。優しいし、背も高いし」

それにエドはピクッと反応した。
よかった、食いついてくれた。

「それは俺が小さいって事か?」
「そ、そんな事ないよ!……多分」
「多分?!何最後に付け足してんだよ!」
「あ、エドはこのままでいいよ!……多分」
「また言いやがったなフェリア!」
「アハハ!気のせい気のせい!」
「んにゃろ~どぉせ俺はチビだよ!……ぜってぇ認めねぇけど」
「エドが何か弱気になってる~!」
「う、うるせぇ!」


嘘。
みんな嘘だよ。

私はあんな人に興味なんてない。

私は身長なんて気にしない。
ううん……エドの身長が私の理想の恋人の身長。


だから本気にしないでね?

私が好きなのは……貴方ただ1人なんだから。


……私は自然に笑えていたよね?

こんなのでエドと普通にしてられるなら、いくらでも嘘つくよ。
エドが私に怒った顔をしてくれるなら、私はいくらでも怒らせるよ。
怒る本当の理由が私になくてもいいから。


今は私とエドしかいないの。

だからエド……私と話をして。


もうすぐ宿に着く。
そしたらまた私は独りぼっちになるんだ。

早く着いて欲しかったのに、

今は……時が止まればいいって思ってる。











「いいなぁ~フェリアの髪」
「ん~?」

お風呂上がりに髪を拭いていると、ソファーからウィンリィのキラキラした眼差しが目に入った。

こっちの部屋には女組、つまり私とウィンリィが泊まっている。
私のお風呂が長いって苦情が出たからいつも私がウィンリィの後に入る。


フェリアの髪って真っ黒なんだけどすっごく綺麗だもん!」
「……そう?」

フェリアは髪を一束掴んでじっと見つめた。
でも何の感動も生まれない。

風呂上がりでなくてもしっとりと手に絡みつく黒髪。
適度に伸びた髪は、フェリアの一挙一動に合わせてしなやかになびく。

そういえば今日あった男の人は、『黒真珠のようだ』なんて言ってた気がする。
女でも見惚れるのは無理もない事だった。

「いいなぁ……私も黒髪だったらもうちょっと控えめな性格になったかもしんないのに」
「何?自分の性格が『控えめじゃない』って気が付いてたの?」

意地悪く笑ってみせた。

フェリアの意地悪!私だって……女らしくなりたいよ……」
「……そう」


『それは何故?』なんて聞けない。
知りたくない予感がするから。


「……私は、ウィンリィみたいな金髪の方が羨ましい……」

ぽつりと呟いた。

「……そ~う?こんなの何処にでもある色なのにぃ……」
「……だって……」
「だって……何?」

「……ううん、何でもない」

私は笑って話を反らした。



だって……エド達と同じ金髪じゃない……











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なんちゅー……内向的な主人公だ。暗すぎる。