※この話には18禁相当の性描写がありますのでご注意下さい。
「リチェルさんの事、本当に好きなんですか?」
突然、年下のルカに尋ねられてミハエルは読んでいた雑誌を閉じて眉根を寄せた。
入院生活にそろそろ飽きてきた所に来た来客だったが、珍しくルカは真剣な顔付きだった。
「何だよ急に?」
「僕はミシェル先輩が他の女性とも関係を持ってる事も知ってます。本当の所ミシェル先輩はどうなんですか?」
今日はどうしたというのだ。
ルカは様々な真実を知っていても、それを打ち明けて人の真意を探ろうとしない性格のはずだ。
悪く言えば自分に損がなければ干渉しないし、得だと思えば感情を捨てられる人間。
そんなルカがミハエルの女関係に口を出してくるとは。
「お前こそどうなんだ?ちゃんとナナセを捉まえておかないと誰かに盗られるぞ?」
「……先輩に言われたくありません」
「知ってるだろ?俺はリチェル中尉一筋だって」
「じゃあ、どうして好きなんですか?」
「おいおい、それはお前に言う事じゃないだろ?」
笑ってみせると、ルカはこれ以上言っても無駄だと思ったのか、話題を変えてしばらく談笑し、帰って行った。
誰もいなくなった病室でミハエルは窓の外を眺めた。
ルカが自分にそんな事を問う意味がわからない。
(好きでなければ付き合わない、なのに何故あんな事を聞かれる?)
ルカにしてみれば、一人に絞らない事を不徳と思っているのか。
だが、一人に絞らなければいけない理由などどこにある?
利害が一致しているのなら何の問題もないじゃないか。
(……一途に想うだけの方が非生産的だろ?)
――「好きなんですか?」――
「……ああ、好きだよ」
――「じゃあ、どうして好きなんですか?」――
「どうしてだろうな……強いて言えば……」
「リチェルさんの泣いた顔……すげぇ欲情するから、かな」
彼女は笑顔ばかりで、何かに執着するような素振りをいつも見せない。
誰もが頬を染めて惚れ込むであろうミハエルの口説き文句を、彼女は顔色一つ変えずに笑うだけ。
面白いと思った、同時にその表情を崩してみたいという欲求が生まれた。
彼女はその笑顔の奥で何を考えているのだろうかと、愛の言葉で動揺する姿が見てみたいと。
だけど彼女はあっさりと承諾した、賭けのような感覚で始まったこの関係を。
キスしても抱いてみても、それでも彼女は笑っていた。
だから都合がいいと思った、それならそれでいいとも。
他の女性と面倒な交渉を持たなくても、彼女一人と恋愛するだけで欲の解消が済むし、後々厄介な事にはなりにくいだろう。
だけど同時に、悔しいとも思った。
22・望んだ価値に
リチェルは泣けない。
どんなつらい事があっても泣けない体になってしまった。
だけど一滴も流れない訳じゃない。
生理的な涙を無理矢理引き出されれば、意思に関係なく目から溢れる。
「ふ、ぁ……ああっ…!」
「可愛い、リチェルさん……」
秘部に貫かれる重い圧迫感。それを凌駕する刺すような快楽。
リチェルが感じているのをじっくり見下ろしてから、ゆるゆると腰を動かし始める。
何度も絶頂を迎えさせられて敏感になっている所に続けて刺激を与えられ、リチェルの意識は混濁していく。
「ミハ…も、……無理っ」
「、冗談でしょう?貴女が軍にいる間も俺が入院してる間もおあずけだったのに」
動きを止めて頬にへばりついた髪をどかしてやると、
逃げるように荒い息で喘ぎ、救いを求めてミハエルを見上げる。
「は、…ふぁ……んん」
「そんな顔されたら……やめられない」
ミハエルの熱い舌が生き物のように肌を這い、暗がりでも白いとわかるくびれをなぞる。
リチェルの舌も奪って吸い尽くし、もうどちらの唾液かもわからない。
翡翠の瞳が直にリチェルを見下ろし、獣のような気分で捕らえられる。
「あ……ひああっ!」
最奥を穿たれただけで頭に電流が走る。
閉じてしまった目を開くと、ミハエルが気持ちよさそうな顔をして笑っていた。
「、は……リチェル…」
「っ――!」
耳元で囁かれる吐息混じりの声。
彼は知ってる、私が名を呼ばれると弱い事に。
そうして、また抜け出せなくなる。
「も、あ……んあぁ!」
「まだ…、もっと鳴いて…」
「ひああ……っ!ミハ、エ……もう―――!」
名を呼ぶ声が悲鳴に変わって。
追い詰めて、追い詰めて。
何もわからなくさせて、現実すらわからなくさせて。
自分さえ、体を預けている人間の事さえも忘れさせて。
そうして意識を手放す寸前、最後の最後に。
瞳から流れる、一筋だけの涙。
「っっ――!」
背筋がゾクリと粟立つその一瞬。
高鳴る心臓の鼓動を聞きながら、そのまま沸き上がる欲情を吐き出した。
「っは……たまんない、リチェル……」
……嫌だ、もう抱かれたくない。
抱かれるたびに、悔しさが体に染み渡る。
愛されてるのに、愛されていない現実に……押し潰されそうで。
それでも、こうやってまた私は抱かれてしまう。
頭では理解している、このままでは駄目だと。
……なのにミハエルを手放せない。
痛い、体が軋んで、心が痛い。
「アルト!そこは左に旋回しろって言ってるだろ!」
「っせーな!言われなくてもわかってんだよ!」
スカル小隊の訓練中の様子がモニターに映し出され、さらには2人の喧嘩のような怒声も聞こえる。
他パイロット達と共にその言い合いを見ていたリチェルは呆れたように笑った。
すると同僚のパイロットが「そういえば、」と口を開いた。
「ミシェルってアルトには厳しいよな」
「ああ、そういえばそうだな。あいつはいつでも紳士って感じなのにな」
「同年代だから、って言ってもルカにはそれほど厳しくねーよな?」
「ミシェルが感情的になってる所、よく考えたらあまり見ねぇな」
男達は口々に言う。
確かにミハエルはどんな人間に対してもあの人好きのする笑顔で接する。
だから、アルトに対して攻撃的に物を言う姿はあまり見慣れない。
「いいんじゃない?それだけ気兼ねせずに言いたい事言えるって事でしょ?」
リチェルがのほほんと答えると、男達は何となく納得したようだった。
だけど、別に自分達に対してもそんな姿でいてくれてもいいのに、と思うのが男達の本音だった。
「色々と思う所はあるだろうけど、アルトには妥協を許さないって意味じゃない?」
「まぁな、スナイパーとアタッカーっていえばパートナーみたいなもんだしな」
「でしょー?何だかんだ言って仲が良いんだよ、あの2人」
訓練が終わり、格納庫にはスカル小隊のバルキリーが戻った。
機体から降りたミハエルがリチェルを見つけると、完璧なスマイルで近づいた。
「報告が終わったら食事に行きませんか?」
「うん、いいよ。食堂ってのが味気ないけど」
「俺はリチェルさんがいれば何処だって美味しいよ」
リチェルから離れ、ミハエルとアルトそしてルカは並んで歩いていく。
まだ言い争いは収まっていないようで、2人は小突き合いながら声を荒げていた。
その背中を、見つめた。
「ただ優しくされるより……ずっと羨ましいよ」
少しでいい、貴方の本音が聞きたいのに。
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ちょっと性描写キツくなっちゃいましたかね?これでも何とか抽象的にしたんですけど……
よく考えればミハエル10代……まぁ、盛りですね(笑)