『春』 ~尚隆~





「ねぇ、尚隆」
「なんだ」

尚隆がこっちを振り向く。

「見て見て、花びらが」
「ああ・・・桜だな」

ピンク色の淡い花びらが持っていた酒の杯に波紋を描く。
見上げれば、遠くにある桜の木から花びらが流れてきたようだ。

「綺麗だね・・・私、桜の花が一番好きかも」
「・・・桜は蓬莱にもあった」
「そうなの?」
「ああ、春の季節になるとそこら中で咲いていた。
・・・桜ぐらいかもしれんな、散っていく姿に魅せられるのは」

尚隆の言葉に呼応するかのように、花びらがはらはらと私の尚隆の間をすり抜ける。

「・・・桜はね、最後の最後まで綺麗でいたいんだよ、きっと」
「・・・そうかもな」
「私も・・・最後の最後まで尚隆の傍にいるから」


ずっと、尚隆に愛されるような女でいるから。


「・・・そうか」

尚隆はふっと笑って杯の酒を飲み干した。

「飲まないのか、それ?」
「え?飲むよ?」

催促されるまま、私は杯を傾けた。
水面に浮かぶ桜の花びらがフワフワと漂う。
花びらを飲まないように気をつけて飲んでいたけど、最後は私の唇にくっついてしまった。

「あ・・・花びらが・・・・っ!」

それを待っていたとばかりに尚隆が私に口付けた。
酒の香りがするその尚隆の唇が離れると、そこには花びらが。

「桜酒だな」
「・・・違うでしょ・・・もう・・」


ペロリと唇を舐めて花びらを飲み込む尚隆の仕草に、私は頬を桜色に染めた。










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尚隆様はそこにいるだけでハアハアしますね(笑)